結論:言われていることと、確認できるか
| よく言われる不安・噂 | 公表情報で確認できるか |
|---|---|
| 「35歳を過ぎると未経験からは無理」と言われる | 一部できる(求人の年齢制限は原則禁止だが、法律上の例外に該当する求人がある) |
| IT業界は人手不足だから未経験でも需要がある | 一部できる(経済産業省の需給調査。ただし将来予測であり“今すぐ採用される”根拠ではない) |
| スクールに行けば転職できる | できない(個々のスクールの実績、体感の要素) |
| 給付金でスクール費用が安くなる | できる(厚生労働省の教育訓練給付制度。対象講座かどうかは個別に確認可能) |
| 未経験可の求人は実際には条件の悪い客先常駐要員として使われるだけ | できない(個別の求人・会社次第) |
「30代 未経験 エンジニア」「IT 転職 未経験 30代」など、検索の言い回しは複数ありますが、知りたいことはおおむね共通しています。この記事は、そこに含まれる不安・噂のうち、公表情報で確認できる部分を切り分けます。判定するのは読者自身です。
① 「30代未経験エンジニア」の不安に含まれる5つの論点
一括りにされがちですが、性質の異なる話が混在しています。
- 年齢による採用制限の有無: 法律・制度に基づいて確認できる部分があります
- 業界全体の人材需要: 公的機関の調査データがありますが、個社の採用意欲とは別の話です
- スクールの効果: 各スクールの実績であり、公表情報からは検証できません
- 費用面の支援制度: 対象講座かどうかを個別に確認できます
- 入社後の実態(未経験可求人の中身): 個別の求人・会社次第で、契約形態の確認は別の切り口(②を参照)が必要です
② 「35歳の壁」の法的な位置づけ
労働施策総合推進法第9条により、事業主は労働者の募集・採用にあたって、原則として年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めなければならないとされています。 年齢を理由とした一律の不採用は、原則として認められていません。
一方で、同法の施行規則には例外事由が定められており、その一つに「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」があります。新卒一括採用や、長期的なキャリア形成を前提とした若手採用に限定した求人は、この例外に基づいて年齢を絞ることが法律上認められています。
③ IT人材不足という話はどこまで根拠があるか
経済産業省は2019年4月に公表した「IT人材需給に関する調査」で、IT人材の不足数について複数のシナリオでの試算を示しています。 需要の伸びが中位のシナリオで2030年に約45万人、高位のシナリオで約79万人の人材が不足するという試算です。
この調査は、IT業界全体の構造的な課題を示す公的資料としては参照できますが、個々の会社が未経験者を積極採用しているかどうかとは別の話です。
④ スクール費用の給付金制度を確認する手順
厚生労働省の教育訓練給付制度には、プログラミングなどIT分野の講座を対象に含む「専門実践教育訓練給付金」があります。 第四次産業革命スキル習得講座(通称「Reスキル講座」)として、AI・IoT・データサイエンス・クラウド、高度なセキュリティやネットワークなどを扱う講座が認定対象分野です。受講費用の一部(上限あり)が給付されます。
ただし、厚生労働大臣が個別に認定した講座のみが対象であり、スクールやコースを選べば自動的に対象になるわけではありません。検討しているスクールの講座が対象かどうかは、ハローワークインターネットサービスの講座検索、またはスクール自体への確認で判断できます。
⑤ 未経験可求人の実態をどう確認するか
「未経験可」の求人の中には、教育体制を整えた自社開発企業もあれば、客先常駐(SES)の要員として配属される求人もあります。どちらの形態かは、求人票や面接での契約形態の確認で、ある程度切り分けられます。
- 自社開発か客先常駐かは、求人票の「就業場所」「配属先」の記載で確認できることが多い
- 客先常駐の場合、契約形態(派遣かSESか)によって働き方が変わります。詳しくは「客先常駐やめとけ」は何が事実かで扱っています
- 入社後の教育体制や研修期間の有無は、求人票の記載だけでは確認しきれず、面接での質問が必要です
⑥ それでも挑戦する価値がある人・慎重に考えたほうがいい人
挑戦する条件が揃っていると考えられるケース
- 応募する求人が年齢制限の例外事由に該当しないか、該当する場合でも理由が明示されている
- スクールを利用する場合、給付金の対象講座かどうかを事前に確認できている
- 未経験可求人の配属先(自社開発か客先常駐か)を面接で確認できている
慎重に考えたほうがいいケース
- 「未経験でも高収入」を強調するだけで、配属先や契約形態の説明が求人票にも面接でも得られない
- スクールの受講前に、対象講座かどうかを確認せずに高額な費用を払おうとしている
- 年齢制限の理由を尋ねても、会社側が説明できない
⑦ よくある質問
求人票に「35歳以下」と書かれているのは違法ではないのですか。
労働施策総合推進法の例外事由(長期勤続によるキャリア形成を図る場合など)に該当する場合、年齢を限定した募集・採用は法律上認められています。求人票には、この例外事由に該当する場合、その理由を示すことが求められています。理由の記載がないまま年齢だけで絞っている求人は、確認が必要です。
未経験でも正社員として採用されますか。
契約形態は会社によって異なり、本記事では一般的な傾向を断定できません。求人票の雇用形態の欄(正社員・契約社員など)と、試用期間の有無を個別に確認してください。
スクールに通わずに転職できますか。
スクールの利用は必須ではありません。実際にスクールを使わず独学で転職した人がいるかどうかは、本記事で扱う公表情報の範囲では確認できません。求人ごとの応募条件(未経験可・資格不問等の記載)を確認してください。
年齢制限に該当しない求人や、契約形態が明確な求人を探す場合、社外の第三者に相談する方法もあります。ITエンジニア向けの転職エージェントの中には、求人ごとの契約形態や配属先の情報を確認したうえで紹介する運用のところもあり、比較材料を増やす手段になります。
出典: 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第9条、同法施行規則第1条の3、経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月公表)、厚生労働省「教育訓練給付制度」。いずれも2026年8月23日時点の確認です。